カトリック教会のお知らせ
『見よ、それはきわめてよかった――総合的なエコロジーへの招き』7月1日発売
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推薦のことば

小原克博 (同志社大学学長、神学部教授)

髙見三明 (長崎名誉大司教)

萩原千加子 (カリタス女子中学高等学校校長)
本書について
本書のタイトルとなっている「見よ、それはきわめてよかった」は、旧約聖書の創世記1章31節にあることばです。創造主である神は、すべての被造物を「よいもの」としてお造りになりました。その「よいもの」が、いまや瀕死の状態にあります。環境危機への対応は、まさに全人類共通の喫緊の課題です。
日本の司教団は、教皇フランシスコが2015年に公布した回勅『ラウダート・シ――ともに暮らす家を大切に』に学び、時間をかけて、環境危機を扱う本文書の作成を進めてきました。
副題にも表現されていますが、中心となるテーマは、教皇が『ラウダート・シ』で説いた「総合的なエコロジー」です。それは、あらゆるものは密接に関係し合っているという考えから出発するものです。カトリック教会は、神と、他者と、自然と、そして自分自身との調和ある関係を追求して生きていくようにと呼びかけることで、持続可能な人間開発の実現を目指しています。
環境危機についての考察はつねに、その人間的側面と社会的側面とを取り上げてなされなければなりません。それを可能にするのが、総合的なエコロジーの考えであり、そこから導かれる姿勢です。
本書は、次のような3部の構成となっています。
第一部 観るSEE――「ともに暮らす家」を観る
第二部 識別するDISCERN――信仰に照らされて識別する
第三部 行動するACT――ともに生きるために行動する
観る、識別する、行動する――この3段階のプロセスは、カトリック青年労働者連盟(JOC)の実践から生まれ、教皇ヨハネ二十三世の回勅『マーテル・エト・マジストラ』(1961年)に取り入れられたものです。
ともに暮らす家、すなわち地球で今起きていることに対応するには、まず何が起きているのかを具体的に知り、知ったことについて、しかるべき原理に照らして判断を加え(カトリック教会においては、教会の社会教説[教会の社会についての教え]が基準となります)、その判断を踏まえて、なすべきことを決定し実践へとつなげていかなければなりません。こうした考えを本書は骨組みとしています。
今人類には、大胆なライフスタイルの刷新が求められています。それをどのように行っていくかは、各人が置かれた場(家庭、学校、職場、地域、信仰共同体など)によって異なります。
また、国や自治体あるいは企業などに訴えていく、社会全体に働きかけていくといった行動もあれば、個人の努力や心掛けによってなされる行動もあります。さらには、学校、勤め先、地域といった、身近な人間関係の中で協力して進めていく行動もあります。
そうした包括的な見地を本書は備えており、それを踏まえて読者に、環境やエコロジーについての理解と実際的な行動を促しています。
日本司教団は2020年に「すべてのいのちを守るためのキリスト者の祈り」を公にしました。地球を傷つけてきたことを真摯に反省し、神の愛の道具となることを願う祈りです。本書は、この祈りの引用によって結ばれています。
カトリック教会の司教団が著すものですから、すべては信仰の視座に基づいています。ですが、ここに述べられた訴えは、カトリック教会のみに向けられたものでもありません。
「すべての人が与えられたいのちを十全に生きることができるように」、その願いをもって日本司教団は、2001年に『いのちへのまなざし』を、2017年にはその増補新版を刊行しました。それは、宗教者の立場からでありながらも、一宗教の枠を超えて広く社会全般への呼びかけとなることを願って発せられたメッセージです。教会は社会から遊離したものであってはならず、社会への訴えかけは義務であり、欠くことのできない務めです。
その自覚をもって、『いのちへのまなざし』を受け、その主題をさらに展開していくものとなること――、本書刊行の意図は、そのように表現できるものでもあります。
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